みんながエステをやる前にやっていたのは……
僕は、みんながエステをやる前にやっていたことがあった。高須クリニックを作った5年後くらいに、「銀座ビューティークリニック」っていうエステ院を資生堂パーラーの隣で始めたの。歌手の仲宗根美樹さんのやっていた審美容だったところで、みんな行き詰まると「息抜きで……」って訪ねてきた。そこに冷凍サウナを作ったんだ。
普通、サウナは身体を温める。そうしたら外に出た時に涼しい。でも、中で冷やしてから外に出ると、暖かさを感じる。あちこちのメディアで取り上げられた。
でも、これもこの時代には早過ぎたみたい。
女性週刊誌とかで、“これからはエステの時代だ!”っていう記事を作ったりしていた頃で、“エステって何?”っていう時代。それは医者じゃないヤツが、美肌とか美顔術とか、医者のようなことをやって稼ぐ商売って非難されていた。
たかの友梨さんは丸平さんの東京ビューティーセンターで働いていて、そこから独立した。僕は丸平さんが作るよりも早かった。医師免許を持っていなければ、あの頃にサウナを流行らせたりして今とは違った大きな企業になっていたかもしれないと我ながら思う。
かえって、自分でやって小銭を稼いでしまったのが良くなかったのかもしれない。いくら高い手術料を頂いても、絵描きと同じ。どんなに高値がつく絵を描いても、儲かるのは画商です。ゴッホのように才能があっても報われなかったり、文才がある人間も貧しかったりする。『文藝春秋』創業者の菊池寛さんのようにはなれないものなんです。