角田 実は最初、『台湾漫遊鉄道~』は表紙の可愛らしさに惹かれて手に取りました。帯に「台湾グルメ×百合×鉄道旅」と軽やかな言葉が並んでいましたが、読んでみたら非常に深いテーマで、しかも予想もしないところに話が進んでいくことに驚いて。

もちろん、美味しい食べものもたくさん出てくるし、台湾各地を巡る旅の様子も楽しい。けれど、その奥に「差別とはどういうものなのか」「植民地支配とはどういうことなのか」が書かれていました。

 私も日本の漫画や映画が好きですし、近年、日本と台湾はとても密接な関係にあります。でも歴史を振り返ると、日本と台湾は「統治者と被統治者」の関係でした。外来の政権に統治されてきた台湾の歴史は、台湾人のなかでも世代によって認識や捉え方がさまざまです。

だからこそ歴史を知り、考えていくためにも、私はエンターテインメントとして読者に問いかけるのがいいのではないかと思い、この小説を書きました。そこで、読者に興味をもってもらうために、美食や百合という要素を加えることにしたのです。

角田 なるほど。

 それと、『台湾漫遊鉄道~』の前に『花開時節』という長篇作品があるのですが、二人の女学生が主人公で、こちらも日本統治時代を舞台にした話です。

当時は、女学生が旅行するのは難しかったので、次の作品では1930年代に女性が旅する話を書いてみたいと思いました。それが、旅行をテーマのひとつにした理由です。そういえば、『花開時節』には『婦人公論』が登場しているんですよ。

 

四維街一号に暮らす五人』(著:楊双子/中央公論新社)2090円(税込)
古い日式建築の女性専用シェアハウス・四維街一号。酒呑みの大家に見守られながら、1階はBL作家の知衣と聡明でモテる小鳳、2階は苦学生の家家とシャイな乃云が住む。100年前の料理レシピの出現によって、ワケあり住人たちが味わう未知の痛みと台湾料理の物語