ナルキッソスの呪いを解く

では、どうしたら、この「呪い」を解くことができるのでしょうか。

(写真提供:Photo AC)

その答えは既にわかっています。もちろん、「ありのままの自分を受け入れる」ことです。

しかし、今更どうしたらそんなことができるのでしょうか。実は、その前に必要なことがあります。それは「自分のありのままの気持ちに気づく」ことなのです。そんなことは簡単なように思うかもしれません。しかし、よく考えてみてください。

本当に自分のありのままの気持ち、わかっていますか?

私たちは、自分に嘘をつくことがあります。これを自己欺瞞といいます。

健全な自己愛を得られていない人は、特にこの自己欺瞞が多いのです。つまり、「自分のありのままの気持ち」だと思いこんでいて、実はそうではないものが沢山あるのです。

たとえば、こんな人のケースについて考えてみましょう。Aさんは、「自分の意見は特にない」派の人間だと思っています。自分の意見は特にないので、何を聞かれても、「何でもいいよ」「アナタの好きなものでいいよ」「みんなで決めて」と言ってしまいます。誰かと食事に行くときも、遊びに行くときも、他人の意見に決まってしまいます。

でも、実は、あとでモヤモヤと考えてしまうことがあります。「今日は魚のほうが良かったかな」「本当は家でゴロゴロしたかったな」などと。

このAさんは、私が創作した一例にすぎませんが、きっとこんな人どこにでもいると思うのです。もしかしたら「私だ」などと思う人もいるかもしれません。

では、このAさんは自分の気持ちに嘘をついていたのでしょうか。本当は違う気持ちだったのですから、結果からすると嘘をついていたことにはなります。ただ、これは結果論にすぎません。最初に自分の意見を聞かれたとき、「特に何でも良い」と思ったのは事実です。だからこの点では嘘ではないとも言えます。

ではAさんのモヤモヤの正体は何なのでしょうか?