「他人の顔色ばかりうかがって自分を後回しにしてしまう」「いつも不安でどこか落ち着かない」といった悩みを抱える方もいらっしゃるのではないでしょうか。このような「生きづらさ」について、精神科医Tomy先生は「これらのテーマの根幹には『愛』の問題が必ずあります。もし、『愛』の答えを出せたのなら、全ての悩みを軽くすることができるはずです」と語ります。そこで今回は、精神科医Tomy先生が「愛」に溢れた人生を送る方法をまとめた著書『愛の処方箋』から一部を抜粋してお届けします。
自己愛不全
ナルシストの語源となったナルキッソスは、実はもともと「自分の姿に見とれるような人間」ではありませんでした。神ネメシスの怒りによって、ナルキッソスが、自分だけに惚れるように変えられてしまったのです。つまり、これは呪いなのです。健全な自己愛が得られないということは、一種の呪いだと言えるでしょう。
しかし、健全な自己愛が得られないのは「自己愛性パーソナリティ障害」だけではありません。
「ありのままの自分を受け入れられない」人は、全てこの呪いにかかっているのです。
そこで、私は健全な自己愛を得られない人々、つまり「ありのままの自分を受け入れられない」人々のことを「自己愛不全」として取り上げようと思います。この自己愛不全は、多くの人が陥っている事態です。世の中の生きづらさのほとんどは、自己愛不全が起こしていると言ってもよいぐらいではないかと考えています。
なぜなら、人が悩むとき、多くは「自分」について悩んでいます。しかし、本来であれば「自分」について悩む必要などないのです。自分は自分であり、それ以上のものでもそれ以下のものでもない。ましてや悩む対象でもない。
それなのに、自分のことで悩んでしまうのは、自分をありのままに受け止められていないからです。
いくつか例を挙げてみましょう。