Aさんのモヤモヤの正体
これはAさんが「自分のありのままの気持ち」をわかっていないことが原因なのです。自分の気持ちを覆い隠して、本当はそうではないものを自分の気持ちと思いこむ。自己欺瞞の癖がついてしまっているのです。
その理由には、様々なものが考えられます。
たとえば、小さな頃から親に自分の意見を否定されて育ってきた場合。この場合は、「自分の意見など持っても無駄だ」という学習をしてしまいます。自分の意見を表明して、否定されたら嫌な気分になります。だったら自分の意見を言わないほうが楽です。それでも「自分の意見を言えない」ことはストレスになります。
それが進むと「自分の意見がわからない」「自分の意見はない」という状態になります。自分の意見がないことになっていれば、表明する必要もない。否定されることもない。そういう悲しい学習の結果でも、Aさんのような事態になり得ます。
こうした事態は、いろんなところで起きています。
自分のありのままの気持ちを知ることは、時として困難なのです。また、健全な自己愛が「自分のありのままの気持ちを受け入れる」ことであれば、Aさんもまた、不健全な自己愛の持ち主なのです。
こうして考えると、Aさんのように不健全な自己愛から起きる「自己愛不全」の犠牲者は大勢いるはずなのです。
「自己愛」は「愛」の基本です。つまり、「愛」に悩み、この記事を今読んでくださっている皆様もおそらく「自己愛不全」という呪いにかかっているのです。
※本稿は、『愛の処方箋』(光文社)の一部を再編集したものです。
『愛の処方箋』(著:精神科医Tomy/光文社)
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