ところが……
ところが全ての早期死体現象がピークを過ぎており、唇や指先などからかなり水分が失われて乾燥が始まり硬直も解け始めています。遺体の状況からすると24時間程度は間違いなく経っているのです。そうなるとセンサーの機能との整合性がとれません。体調急変から亡くなってすでに24時間程度経っているのなら、もっと早くセンサーが反応してもいいはずです。相勤者と顔を見合わせてしまいました。
なぜ整合しないのか……。現場の状況と死体所見が合わないということはなんらかの偽装工作を疑わねばならず、事件性も視野に入れる必要が出てきます。また、死亡日時は言うなれば死者の命日です。公的な手続きの起点日としても、死者が亡くなった日として家族が認識し墓石に刻む日付としても、決して蔑ろにできません。
そこで、本部の受理のメンバーに、このようなセンサーと死体所見が合わない事例があるか、あればどのようなケースが考えられるか、相談をしてみることにしました。検討の結果、やはりそのような事例はなく死体所見は絶対なので、そのセンサーの仕組みについて解明するために、受理のメンバーからセンサー業者に確認することになりました。
すると、そのセンサーはかなり高感度でありハエ等の虫にも反応するので、12時間前の反応については虫の可能性が十分考えられると判明したのです。しかし、何者かが自宅に侵入した可能性もあります。慎重に環境捜査を行ない、事件性は否定され、死亡日時は環境捜査や死体所見のとおり発見のおよそ1日前と推定されました。
