疲労感、息切れ、夜中の動悸にひどいむくみ……。たび重なる小さな異変を更年期障害によるものだと思っていた翻訳家の村井理子さんは、それが重病の前兆だと気がつかなかったそうです。長い入院生活とリハビリを経た現在の暮らしと、不調にいち早く気づくための心構えを聞きました。(構成:山田真理 撮影:霜越春樹)
退院の時期と兄の死が重なって
ただ退院して1年ほどは、精神的に不安定でしたね。「もしあの時、死んでいたら」と思い出しては怖くなる。よせばいいのにネットで心不全の予後を検索し、良くない情報に振り回されては不安になって。
ところがその頃、兄が死んだんですよ。この秋公開される映画『兄を持ち運べるサイズに』の原作(『兄の終い』)にも書きましたが、絶縁状態にあった兄が突然亡くなり、その人生の後始末をめぐるてんやわんやに、私はヨレヨレの体で取り組む羽目になったのです。
その怒涛の日々がある意味ショック療法になったのか、メンタルの不調は徐々に回復していきました。
年1回の精密検査では何の問題もなし。3ヵ月ごとに薬の処方を受ける通院でも先生の診察はあっさりしたもので、その様子から「私はもう重篤な患者じゃない」という自信が積み重なっていく気がしたものでした。