近年、国や地域別の幸福度ランキングや「ウェルビーイング」という言葉が注目を集めています。この「幸福」というテーマについて、京都大学人と社会の未来研究院の内田由紀子教授は「自分たちが生きている文化・社会環境におけるウェルビーイングとは何かを問い、データを適切に解釈すべき」と語ります。今回は、内田教授が国際比較を通して日本社会における幸せの特徴を探った著書『日本人の幸せ―ウェルビーイングの国際比較』から一部を抜粋してお届けします。
友達を選ぶ国・アメリカ
アメリカでは友達や人付き合いは「自分が選ぶもの」です。以前に行った調査で、今いる友達がなぜ友達であるのかを聞くと、「自分が選んだ」や「自分が相手から選ばれた」といった、互いの主体的な選択を友達関係の成立要因として重要視していました。
また、選ぶ基準としては「良い人間性である」「自尊心が高い」「能力がある」など、価値のある相手を積極的に選択しているのだとわかりました。アメリカのドラマや映画でも、「あなたは私の親友だ」と強調して言うシーンが登場しますが、それは「あなたをベストフレンドとして選んだのだ」と強調して、互いの尊厳を高めあう機能があります。
これに対して同じ調査を日本で実施すると、友達になったきっかけは「サークルが一緒だった」や「出席番号が前後だった」など、主体的な選択が持つ重要性の比率が下がり、「何か共通する場所にいた」という理由が大きく取り上げられていました。
また、友情を深めるために自分からアクションを行う機会は少なく、なんとなく一緒に過ごしたり、相手の話を聞いたりしているうちに気が合うかなと思い始めた、というような回答が多くありました。