女の子三人がこっくりさんを始めた
「私たち、今から『こっくりさん』をやるの」
ある日の放課後、同じクラスの女の子三人が楽しそうに話しながら、教室の机を動かし始めた。美咲さんという子が、友達二人を誘ってやることにしたらしい。
江口さんの通う学校でもこっくりさんはブームになっており、教職員からは「変な遊びが流行っている」と毛嫌いされていた。先生に見つかると注意されるかもしれないという心配があったのだろう。女の子らは、廊下から見えないように机を窓側へと動かし、そこでこっくりさんの準備を始めた。
あいうえお、かきくけこ、さしすせそ……。
四角い紙に五十音を書き、その上に鳥居のマークを描く。その両脇に「はい」「いいえ」の文字を書いて、鳥居に10円玉を置く。そこに参加者全員が人差し指を置いて霊を呼ぶのだが、霊が降りてくると10円玉が勝手に動き始めて文字を指し示し、何らかのメッセージを伝えてくる――というのが、彼女らの『こっくりさん』の方法である。一般的なこっくりさんの手法に則ってはいるが、本来は禁忌とされる禁止事項の厳守や、厳格な作法のもとに行う儀式という説もあり、決して遊び半分でやるものではない。
