(写真提供:Photo AC)
偶然で片付けることのできない怪異を、人は「障り」や「祟り」と呼びます。怪談蒐集家の響洋平さんは、これまで15年以上にわたって怪談に携わり、さまざまな怪異体験談を蒐集してきました。そこで今回は、そんな響さんの著書『触れてはいけない障りの話』から抜粋し、お届けします。

禁止令

「すでに知っている人もいるかもしれませんが、昨日こっくりさんを行ったあとに怪我をした生徒がいます。こっくりさんは絶対にやってはいけません」

当時小学生だった江口さんは、朝の教室で臨時朝礼の校内放送を聞いていた。

「美咲ちゃんたちは、やっちゃいけないことをしたんだ……」

この目ではっきりと見たその事件は、江口さんにとって衝撃的な体験だった。

それは、江口さんが小学校5年生の時だったという。

1980年代の日本では、「こっくりさん」が一大ブームになっていた。子ども向けのホラー漫画やテレビのオカルト番組においても、簡単にできる降霊術(霊を呼ぶ方法)として「こっくりさん」はよく取り上げられており、それにまつわる怪異現象は子どもの好奇心を駆り立てるのに充分過ぎるほどの魅力を放っていた。