美咲さんに起こった異変
準備が整ったのだろう。彼女ら三人は机を囲み、
「こっくりさんこっくりさん、おいでになられましたら『はい』のほうへ動いてください」
と唱え始めた。
江口さんは何人かのクラスメイトと一緒に、その様子を少し離れた場所から見ていたという。西日のあたる放課後の教室で、女の子ら三人は10円玉に指を添えながら、それが動くのを今か今かと待っていた。
「こっくりさんこっくりさん、おいでになられましたら『はい』のほうへ動いてください」
彼女らが何度かそう唱えた時だった。
――だめ!
教室中に響き渡るほどの大声が聞こえたと同時に、女の子の一人――美咲さんの体が、まるで見えないロープで引っ張られるようにガクンと椅子ごと後ろへ動いた。ガガガ、と凄い音を立てて彼女の体は教室の端から端へと引き摺られ、そのまま廊下側の壁に叩きつけられた。「うっ!」という鈍い声とともに無造作に床へと放り投げられた彼女は、誰の目から見てもすでに意識を失っていた。