舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第15回は「役じゃないと歌えない!?」です。(構成:大内弓子 撮影:小林ばく)
音楽とは無縁だった
2025年11月に開催された「~五木ひろし60th Anniversary~五木JAM 2025 in YOKOHAMA」にゲスト出演しました。『オペラ座の怪人』メドレーを五木バンドの皆さんと歌ったほか、五木さんの「暖簾」という曲を、五木さんと一緒に歌ったんです。
事前にすごく練習しましたよ。せっかくだから《こぶし》の勉強もしたい。でも、歌詞の気持ちに沿って、自然に出てくるこぶしならいいけど、無理やり入れるのは違うなとか、いろいろ探りながら。
こんなふうに役を離れて歌うのは滅多にないことなので、貴重な体験になりました。
そもそも僕にとっての歌は、あくまでも役を演じるためのもの。芝居を始めるまでは、まったくといっていいほど、音楽とは無縁だったんです。
父親が銭湯で民謡を口ずさんだり、母親が、神戸一郎さんの「十代の恋よさようなら」や美空ひばりさんの「花笠道中」を歌ったりするのを聴いていただけで、自分が歌うことはなかった。
芝居の道を志して入った舞台芸術学院でも、授業で「サンタ・ルチア」をかじったくらいで、音楽の素養はない。譜面も読めないの。