島の人が積んでくれたグック『竹富島に移住して見つけた人生で大切なこと』より
大学教授を定年前に退職した作家の三砂ちづるさん。竹富島に移住し、65歳にして初めての一人暮らしに挑んでいます。人口330人、娯楽施設はもちろん、買い物ができる店もない「不便」な島。ですが、年間25もの祭事・行事がある島での暮らしは、つねに神様とともにあり、島の人たちとの深い人間関係にも守られています。島での移住最初の1年を綴った著書『竹富島に移住して見つけた人生で大切なこと』より、一部を抜粋して紹介します。

グック

竹富島には伝統建築の家しか建てられない。

伝統建築の家、というのは、いわゆる赤瓦平屋造りの家なのだが、何をもって竹富の伝統建築の家、というか、は、結構細かく決まっており、まちなみ調整委員会にマニュアルとして記されている。

町並み保存、ということなのだから、重要なのは「外からの見た目」であり、外から伝統建築の造りになっていれば、内部はどのように作っても構わないことになっていて、極端に言えば外から見れば伝統建築だけど、中はすっかり洋風の家、というのを作ってもいいのだけれど、

外に向かって縁側があって、そこから出入りするような家、ということを考えると、おのずと、縁側の向こうに一番座、二番座、という和室があって、そこに続いてキッチンがあって、寝室が裏座と呼ばれる家の裏側で……という造りになっていく。

文化庁のデータベースによると、竹富島の伝統建築は「屋敷内の伝統的な構成と配置に珊瑚礁のグック(石垣)に取り囲まれた伝統的な屋敷の中心に居室・寝室としてのフーヤ(主屋)が建ち、その西隣に炊事棟(トーラ)が位置している。

家屋の外観は、木造(貫屋造)・平屋の構造と、琉球赤瓦葺き漆喰塗りまたは茅葺の寄棟屋根、木板張り・木板雨戸の外壁、軒の深さと低さなどが特徴」である。