自分にムリをしても、期待したほどの成果は得られない
私が精神科医の立場から、「体調が悪いならば、我慢をせずに、スパッと会社を休む」ことを推奨するもう一つの理由は、「ムリして出社しても、結局は仕事が進まず、生産性が上がることはない」という点にあります。
疲労感を我慢して出社したが、まったく仕事がはかどらない……という経験は誰にでもあると思います。
タイムカードを打刻するためだけにムリして出社するくらいなら、きっちりと休んで体調を整えた方が、はるかに仕事の効率が上がるのです。
WHO(世界保健機関)が提唱する健康問題によるパフォーマンス損失を表す指標に、「プレゼンティーズム」(presenteeism)というものがあります。
プレゼンティーズムとは、日本語では「疾病就業」とか、「疾病出勤」と訳され、会社員が体調不良を抱えて出勤して、本来のパフォーマンスを発揮できない状態を指します。
風邪を引いたり、片頭痛や腰痛、花粉症の症状などがあっても、ほとんどの人は「会社を休むほどではない」と考えますが、体調不良を抱えたままの状態で仕事をすると、思考力が低下したり、注意が散漫になって、本来のパフォーマンスが発揮できなくなります。
横浜市立大や産業医大の研究チームによる調査によると、プレゼンティーズムによる経済的損失は、日本全体で年間「約7.6兆円」に達しているといいます。
この損失額は、現在の日本のGDP(国内総生産)の1%強に相当しますから、ビジネスパーソンが心身の不調によって、平常通りのパフォーマンスができなかった場合、いかに大きな損失を生み出しているか……が理解できると思います。
自分では、会社のため、チームのために良かれと思って必死の思いで出社しても、きちんと仕事ができなければ、その我慢やムリが結果につながることはなく、経済的には逆効果になってしまうのです。
合理的に考えるならば、「自分にムリをしても、期待したほどの成果は得られない」と割り切る必要があります。