――Dear Jo, 7 Oct No.15
泣き止んだハルの顔を見て、波子は、わからないのってこの数字だけじゃない? と確認するようにいった。
「考えてみたらそうね。ジョーへのメッセージってことはあたしにもわかる。十月七日のあとがわからないだけ。待ちあわせる場所か時間を示しているのかしら?」
「もし、場所と時間と、ついでに行き先まで示しているとしたら? わたし、わかったよ」
波子は椅子に置いていた鞄をがさごそとまさぐって、タバコ箱よりちょっと大きい一冊の冊子を取りだした。表紙には「列車時刻表 台湾総督府交通局鉄道部」と書かれている。今朝、舅(しゅうと)に命じられて駅まで台北行きの切符を買いにいってきたのだという。
波子はぱらぱらとページをめくって、あった! とうれしそうな声を上げた。
ハルが時刻表を受け取って波子が指し示すところを見ると「彰化 高雄(たかお)」線のページの列車番号欄に「15」という数字があった。台中駅発の時刻が四時五十三分、汽車は高雄いきだ。
つまり、明日子のメッセージの意味は、十月七日の午前四時五十三分に台中駅から出発する十五号の汽車に乗ろうということなのだろうか。
ハルが考えていると、玉蘭がいった。
「たしかに筋は通るけど、ほんとうに秀玲への伝言かどうかはわからないんじゃない? 明日子がじつは恋多き女で、あのハガキはジョーって別人にあてたものがたまたま届かなかっただけとか。だって『ディア・ジョー』だけじゃ、だれのことかわからないよ」
波子が急に身を乗りだして、玉蘭、いまなんていった、と少し興奮した様子でいった。
「なにって……ジョーって別のひとがいたかもしれないって……」
「ちがう! そのあとよ」
「ディア・ジョー?」
「それ! このお店『黒猫』最新号ある?」
玉蘭はうなずいて、店のカウンターに歩いていくと、本棚に並んだ雑誌や新聞のなかから、一冊の雑誌を取って、また席まで戻ってきた。
「先月号があったよ」
波子は玉蘭から受け取った『黒猫』のページを一気にめくっていく。だいたい半分を過ぎたところで手を止めてじっとながめる。
「あった――これよ」
ハルが示されたページを目で追うと、それは読者からの寄稿コーナーだった。カフェーの女給たちの人間模様を描写した短いエッセー。
署名は「カフェーダイヤのジョー」。
