波子の説明では、ジョーは第二号から寄稿している熱心な読者で、ペンネームの通り台中市内のカフェーダイヤで働く人気女給であるらしい。客とのやりとりや同僚たちの様子を描写する生き生きとした筆致が編集部でもしばしば話題になっていたので、ハルも記事には目を通していたが、ペンネームのことはすっかり忘れていた。
「まだ時間があるなら今日の午後に会いにいってみたらいいんじゃない? もちろん制服じゃなくて、いつものワンピースとかに着替えて。女ひとりじゃ目立つから、だれか一緒にいければいいんだけど。わたし、家が厳しいし……」
波子は前に座る玉蘭に視線を送る。玉蘭は残念そうに首を横にふった。
「締切直前なの……はじめてのルポルタージュだしね、ちょっと気合い入れて書かないといけないんだ。編集部に電話して、いけそうなひといないかきいてみる。小姐なら支配人に顔が利くだろうけど……」
「小姐は絶対やめて!」
玉蘭はくすりと笑うと、了解、といって席を立った。もう気持ちは書きかけの原稿に戻っていることが、ハルにはわかった。
