内閣府が公開した「令和7年版高齢社会白書」によると、令和6年10月1日時点での65歳以上人口は3624万人で、総人口に占める割合は29.3%だったそうです。超高齢社会といわれるなか、高齢者医療の現場に長年携わる精神科医・和田秀樹先生は「現実は『高齢者に優しい社会』とは程遠い。社会全体で尊ぶどころか、『高齢者ぎらい』の空気を醸成しているのが現状」と指摘しています。そこで今回は、和田先生の新著『「高齢者ぎらい」という病』より一部を抜粋してお届けします。
「高齢者の事故が多い」という印象
警察庁が公表している資料によると、日本で2024年に起こった交通事故は29万895件、そのうち死亡事故は2598件で、交通事故死者数は2663人となっています。つまり単純に計算すれば、一日あたり約797件の交通事故が起き、そのうちの約7.1件が死亡事故となり、約7.3人が亡くなっているのです。
それが死亡事故だとしても、すべてが全国ニュースで取り上げられるわけではありません。だから、平均で一日に7.1件もの死亡事故が日本のどこかで起こっているなんて知らない人もたくさんいるのではないでしょうか?
ところが、高齢者が起こした事故であれば、それだけでニュース性があると判断され、取り上げられる可能性は一気に高まります。そして、死亡事故である場合はもちろんのこと、それ以外の場合でも、「運転者は75歳男性」というテロップを表示するなどして、「高齢者」という属性をわざわざ強調しながら報じたりするわけです。
そのような報道が増えるだけでも、「最近、高齢者の事故が多いな」という印象を与える効果は十分あると思うのですが、ある時期からは「高齢者がまた事故を起こしました」などというふうに、その印象をさらに強化する表現も目立つようになりました。