内閣府が公開した「令和7年版高齢社会白書」によると、令和6年10月1日時点での65歳以上人口は3624万人で、総人口に占める割合は29.3%だったそうです。超高齢社会といわれるなか、高齢者医療の現場に長年携わる精神科医・和田秀樹先生は「現実は『高齢者に優しい社会』とは程遠い。社会全体で尊ぶどころか、『高齢者ぎらい』の空気を醸成しているのが現状」と指摘しています。そこで今回は、和田先生の新著『「高齢者ぎらい」という病』より一部を抜粋してお届けします。
「認知症のせいで暴走事故が起こる」という無責任な言説
「高齢者の運転は危険だ」という話になると、必ず持ち出されるのが「認知症」という言葉です。
たとえば、ブレーキとアクセルを踏み間違えて暴走事故を起こした場合、ワイドショーのコメンテーターたちは決まって「認知症の症状が出たのではないか」などとしたり顔で語ります。高齢になるほど認知症のリスクが上がるのは事実ですから、高齢者の運転は危険だとする根拠とするのに、これほど都合のいい話はないのでしょう。
しかし、高齢者専門の精神科医として老年医療に長く携わってきた私から見れば、それはとんでもない誤解です。
なによりまず、認知症の患者さんにブレーキとアクセルの区別がつかなくなる、といった症状が出るとすれば、それはその人がかなり進んだ認知症を患っているケースのみです。