「お父さんがいなくて困ることはない」

子どもの習い事や進路を夫に相談すると、反対することもなければ、親身になって考えてくれることもなかった。家族で夕飯を食べた後も、たばこを吸うためそそくさと自室にこもってしまう。

結婚して10年ほどで、子育てについて相談するのをやめた。自然と、「家の中では、お父さんがいなくて困ることはない」といった空気になっていった。

結婚生活が終わることに未練はない。それでも、「子どもが帰ってくる場所」として、今住んでいるマンションはなんとしても残したかった。2000年ごろに、ローンを組んで3千万円で購入した3LDK。離婚で子どもたちに嫌な思いをさせる以上、「実家」を守ることが、母親として譲れない一線だった。

夫が出て行ってからは、パートで生活費をまかない、貯金をした。離婚後の生活をシミュレートしてみると、結婚前に働いていた分の共済年金と、夫婦間の年金分割で、月8万円は年金での収入が見込めた。

これなら、なんとかやっていけそうだ。「慰謝料はもらえなくていい。とにかくマンションを残せるよう、名義を夫から私に変えてほしい」。代理人弁護士に要望を告げ、調停に臨んだ。

2014年の初頭、家庭裁判所で始まった調停で、夫側が求めてきた条件は主に次の四つだった。

〈マンションを売るために女性は出て行くこと〉

〈マンションを売って得た利益は夫のものとすること〉

〈子どもたちが大学を卒業するまでの学費と生活費は夫側が負担すること〉

〈別居から離婚が成立するまでの期間の生活費(いわゆる婚姻費用)として、月あたり8万円を夫から支払うこと〉