形勢を変えた「手帳」
当時、不動産など夫婦の共有財産は、離婚時に半分ずつ分けるのが慣例だった(現在は条文化)。だが夫側が示した条件に、その点を顧みた様子はない。離婚後、女性がどのように収入を得て暮らしていくのか、一切気にしていない姿勢がうかがえた。
いざ調停が始まると、どうにも話がかみ合わない。どうやら夫は、自身の不貞行為についてシラを切り、代理人弁護士に一切話をしていないようだった。
しかし女性は、決定的な証拠を持っていた。夫の手帳だ。
それを見つけたのは偶然だった。夫が家を出て行った後、工具を探しているとき、夫の机の横の引き出しをあけると、過去5年ほどの革の手帳が残されていた。日々の出来事がマメに記され、11年の秋ごろから、見知らぬ女性の名前が登場するようになっていた。
一緒にテレビを買いにいったこと、ワインをお土産に彼女の自宅に向かったことなどが、細かく書かれていた。手帳にあった住所を、調査会社を使って調べ、夫が彼女と同じマンションに出入りしている様子も写真におさめた。
女性の代理人弁護士は、証拠の存在を相手方に示し、「これ以上やるなら裁判で」と伝えた。するとあっけなく、夫側は条件をすべてのみ、離婚が成立した。調停開始から1年余りだった。