『花のち晴れ』は、F4が卒業して2年たった後の英徳学園を描いた作品だ。花男の登場人物がメインではなく、F4なき後の廃れた学園を盛り返そうと、神楽木晴(かぐらぎ・はると)という主人公が恋をしたり、学園のトップであろうと奮闘するストーリー。『少年ジャンプ+』は少年誌のアプリなので、男性が読める漫画を描かなくてはと思っていた。
何度か話したが、漫画を描くときに大事にしていることのひとつは、読者が感情移入できる主人公の存在。少年誌の主人公でかっこいいヒーローが普通に活躍しても、「あっそう」と流されてしまうと思った。
卑屈でコンプレックス丸出しの神楽木晴。F4の道明寺司が大好きで、彼を神と崇めながら必死で《漢(おとこ)》になろうとする。そして、好きになった江戸川音(えどがわ・おと)という女の子との恋愛によってどんどん成長していく。
ど真ん中で少女漫画を描いていた頃の私とは違う、全体を上から見つつ、かっこ悪くブツブツ言っている神楽木晴のお尻を叩きながら引っ張り上げ、見守るような描き方だった。
主人公が男の子というのも初めてだった。いわゆるイケてないダメな男子を描くのがとても楽しかった。
そしていつまで漫画が描けるかな、これが最後かな、と思いながら心を込めて描いた思い出に残る作品だ。後半、満を持して『花より男子』の登場人物たちが出てくる。ここをずっと描きたかったので、本当に嬉しかった。
いまや、『少年ジャンプ+』の勢いはすごい。あのときのMさんは編集長になっていると聞く。声をかけていただいて本当に感謝の気持ちしかない。
今まで自分が築いてきた場所で、同じことを続けるのをあえてやめてみた。とりあえず挑戦してみる。ダメだったらまた別の道を行けばいいと思いながら飛んでみた。飛び込んだ先は荒れた海だったけれど、とてもいい経験をさせてもらったと思っている。
※本稿は、『花より漫画』(神尾葉子:著/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
『花より漫画』(神尾葉子:著/KADOKAWA)
漫画家生活30年以上。少女漫画界のレジェンド・神尾葉子が、はじめて自身の歩みと創作の裏側を《言葉》で語る初のエッセイ集。
『花男』の誕生秘話、主要キャラクターたちへの愛着、メディア化についてなど、初めて明かされるエピソードも紹介。
著者ならではの、あたたかくユーモアに満ちた〈日常のドラマ〉が詰まった一冊。





