そんなある日、視界の端にまぜ子の姿が映り、その前にしゃがんで餌をやっている人物がいた。白髪のロングヘアを後ろで束ねた、60歳くらいの外国人の男性だった。あの〈人間嫌いのまぜ子〉が、その人に頭をなでられている……触られている―えっ、この人、まぜ子の飼い主なの? 私はそっと近づき、声をかけた。

「すみません、ちょっとお聞きしたいんですけど……その猫、飼ってらっしゃるんですか?」

すると彼は驚いて立ち上がり、止めていた自転車に飛び乗った。

「ワタシノ猫ジャナイヨ!」

そう言って、勢いよくこぎ出した。私はとっさに、自転車の荷台に手をかけて引き止めた。

「ま、待ってください! 違うんです、責めようと思ったんじゃないんです!餌をあげてることを咎めたいわけじゃないんです!」

きっと、これまで何度も誰かに注意されていたのだろう。私は必死で伝えた。

「ただ、話を聞いてほしいんです!」

私の真剣な顔に押されたのか、男性は自転車を止めてくれた。

 

花より漫画』(神尾葉子:著/KADOKAWA)