夏が過ぎ、秋風が吹き始めた頃、ようやく再び捕獲に成功。今度は写真など撮らず、まぜ子をそのまま病院へ連れて行った。避妊手術は無事に終わった。
ロバートさんは、手術を終えたまぜ子を連れて帰り、一緒に暮らそうとした。けれど、まぜ子はそれを断固拒否して、また路上の暮らしに戻っていった。それでも、まぜ子は地域猫としてかわいがられ、その後何年も生きた。
私はその一件の後、隣町に引越したが、たまに前に住んでいた町の商店街を歩いていると、ロバートさんにばったり出会う。彼は相変わらず、自転車に乗っていた。
しばらくして、以前の家の近くを通ったとき、まぜ子が隣の家の塀の上でゴロリと横になっていた。
「ハロー、まぜ子」
そう声をかけると、彼女はやっぱり「フン」と顔をそむけた。でも、その「フン」さえ、私はちょっと、嬉しかった。
※本稿は、『花より漫画』(神尾葉子:著/KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
『花より漫画』(神尾葉子:著/KADOKAWA)
漫画家生活30年以上。少女漫画界のレジェンド・神尾葉子が、はじめて自身の歩みと創作の裏側を《言葉》で語る初のエッセイ集。
『花男』の誕生秘話、主要キャラクターたちへの愛着、メディア化についてなど、初めて明かされるエピソードも紹介。
著者ならではの、あたたかくユーモアに満ちた〈日常のドラマ〉が詰まった一冊。





