時間があるときでいいから、舞子にとって義理の母親にあたる久世英子(えいこ)の古希祝いの贈り物を選んでほしい。そう夫の祐司(ゆうじ)から頼まれたのは先週のことだ。年の瀬の帰省に向けて用意したいという。
なんでもいいから、ちょっと豪華で喜ばれそうなものを頼むよ。
ずいぶん曖昧な頼みごとだと呆れつつ、舞子はそれを引き受けた。祐司がプレゼント選びに不向きな性格をしていることは、八年に及ぶ結婚生活でよく分かっていたので。
なにしろ祐司は二人で選んだ結婚指輪すら、注文の段階でデザインの指定を間違えたのだ。自分が普段接していないジャンルに対する感受性が極端に低く、なにかを任せれば妙なところでミスをする。旅行の手配やPTAの提出物、これまでもさまざまな場面で、舞子は祐司が起こしたうっかりミスの後始末に奔走してきた。
そんな大雑把な夫だが、裏を返せば大らかで明るく、舞子がなにか失敗やミスをしても当たり前のようにサポートしてくれる素朴な気質を持っている。そして、夫は「なんでもいい」と口にしたことについては、舞子がなにを選んでも本当に文句を言わない。時折頼りなさは感じるが、総じて親切な、良い伴侶だと思う。
祐司のためにも、良い品物を義母に選びたい。そう思って、舞子は有休を取った午後に電車に揺られ、都内の百貨店へやってきた。福来屋を選んだのは、数ある百貨店の中でも比較的大衆向けの店舗が多く、親しみやすい印象があったからだ。雀のイラストが印刷された包装紙や紙袋が愛らしくて、人に贈るときに少しうれしくなるのもいい。
