福来屋一階、入ってすぐに行き当たる催事スペースでは、金色に輝くリボンと白銀の玉飾りで装飾された巨大なクリスマスツリーが来店客を迎えていた。ツリーの周囲にはカラフルなプレゼントボックスが積み上げられ、天井から吊るされた雪の結晶型の飾りも相まって、思わず見とれてしまうほどの華やかさだ。
舞子はディスプレイのそばで足を止め、コートのポケットからスマホを取り出すとツリーにカメラのレンズを向けた。角度や明るさを変えて数枚撮り、満足のいく一枚が撮れたのを確認してスマホをしまう。季節の成分を多少なりとも摂取できた気分だ。落ち着いたタイミングで見返そう。
今はとにかく息子の水泳教室のお迎え時間までに、義母への贈り物を選ばなければ。余裕があれば息子のクリスマスプレゼントと、ケーキの下見も済ませたい。自分の仕事、夫の仕事、PTAに町内会、さらには小学一年生の息子の習い事の送迎で、舞子の日々の予定はびっしりと埋まっている。時間をかけて百貨店を巡るなんて、有休でも取らないとできないことだ。
古希はたしか、紫のものを贈るんだったか。
婦人向けのファッション雑貨コーナーの前で舞子は再びスマホを取り出し、情報を集めた。たしかに古希のシンボルカラーは紫だ。なら、紫色のハンカチとかそういうものがいいだろうか?
ただ、還暦を迎えた職場の上司の中には、還暦祝いでよく贈られる赤い品々について、「年取ったっていうのを突きつけられる感じで、ちょっといや」と難色を示す人もいた。もちろん節目の記念品として喜ぶ人もいるだろうが、シンボルカラーの贈り物を喜ぶかどうかは、個人の性格によって違いがありそうだ。
義母はどうだろう?
舞子は昨年の帰省で会った英子の姿を思い返した。揚げ物や刺身などのごちそうが並ぶテーブルの端、台所に一番近い席に座っていた。家族のグラスが空いたらすぐに飲み物を取りに行けるように、取り皿が不足したらすぐに新しい皿と替えられるように、椅子に腰かける姿勢が浅く、落ち着いて料理に箸を伸ばすよりも台所で作業をしている時間の方が長かった。舞子が手伝おうと腰を浮かせると、いいからいいからと手を振って断った。義母の台所にスムーズに出入りできるのは義父の貴之(たかゆき)だけで、年越し蕎麦や雑煮は汁物作りにこだわりがあるという彼が作っていた。
