さらに視野を広げてみましょう。地球と太陽の距離は、約1億5000万キロ。科学者によると、これより近くても遠くても生命は存在できないのだとか。
この絶妙な距離の背景には、火星や土星など太陽系惑星相互の引力のバランスがあり、その背景には数千個もの恒星が集まる銀河系との引力のバランスがある……。
まさしく「一即一切(いちそくいっさい)、一切即一(いっさいそくいち)」。一つのために全体があり、全体のために一つがあるという仏教の教えそのものです。
気づくと気づかないとにかかわらず、私もあなたも宇宙いっぱい、天地いっぱいの働きによって生かされている。この幸せに感謝して、それぞれの持ち場ですこやかに務めを果たしていこうではありませんか。
私は今、93歳。相変わらず忙しくしていますが、人の名前を忘れたり、辞書を引いて言葉の意味を確かめたりはしょっちゅうです(笑)。しかし、念仏者で詩人の榎本栄一さんが詠(うた)ったように、「下り坂には下り坂の風光がある」。老いや病気ゆえに気づく数々の教えに手を合わせ、下り坂だから見える景色を楽しみながら歩んでいます。
早いもので得度から78年、この尼僧堂に戻ってからも六十余年が経ちました。しかし、ようやく仏道の入り口に立ったところ。修行を積めば積むほど自分の未熟さがわかり、道元さまの、「深まるほどに足りない自分に気づく」という言葉に深くうなずくことが増えました。
若かりし日、たった一度の人生を最高のものにしたいと択んだ仏の道。齢(よわい)を重ねた今、「いつお迎えが来ても結構です」の覚悟で、今日只今の生き方を択び抜き、一方、誓願として窮まりなき修行の道を歩んでいこうと誓いを新たにしています。
