「地域の顔」である郷土料理

南イタリアのちょうど長靴の踵の辺りにあるプーリア州は、パスタづくりに欠かせないセモリナ粉とオリーブオイルの大産地である。生産量は国内一であるオリーブは、プーリアの中でさえ地域ごとに種類が違う。各地域に土着の単一品種があるのだ。

野菜の生産も活発で、多種多様な地域野菜が栽培されている。野菜をメインに使う郷土料理も多い。ファーべ・エ・チコリエは、ファーべ(そら豆)のピューレと、くたくたに茹でたチコリエ(チコリ)をニンニクで炒め、半々に皿に盛り付ける。これにオリーブオイルをかけて食べる。

左の料理がファーベ・エ・チコリエ(写真:『イタリア食紀行-南北1200キロの農山漁村と郷土料理』より)

素朴な郷土料理だが、病みつきになる。そら豆の甘み、チコリエのほのかな苦味、土着オリーブオイルの風味――この味覚はこの地域でしか出せない。プーリア人にとっては故郷の味である。里帰りすると必ずマンマにつくってもらう、まさに母の味である。余計な調味料は入れない。

『イタリア食紀行-南北1200キロの農山漁村と郷土料理』(著:大石尚子/中央公論新社)

イタリア人は、自分たちの地域の誇る伝統料理に関しては超保守的である。「地域の顔」である郷土料理は、その土地の出身者には自分のアイデンティティに関わる。