(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
フリーランスのライター・神舘和典さんは、60代を迎えライターの仕事が激減。将来に不安を感じたことをきっかけに、様々な業種の仕事に挑戦してきました。内閣府の「令和7年版高齢社会白書」によると、65歳以上の就業者数は21年連続で前年を上回っており、多くの60代が働くなか<定年後の再就職先>に悩む人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、神舘さんが自らの職業体験を赤裸々に綴った『60歳からのハローワーク』から一部を抜粋してお届けします。

ファストフード店で店員

飲食店でも自分を試してみたかった。

ハンバーガーや牛丼などファストフード店に客として訪れると、同じ世代の人が働いている。男性も女性もいる。厨房の奥でなにかしら作業をしている。あるいは、フロアで掃除をしたり、テーブルを消毒したり。感じのいい人が多い。

カウンターでオーダーを受けるような目立つ仕事は、かわいらしい女子やイケメン男子がテキパキと行っている。

外食産業やホテルのレストラン部門の求人は少なくない。採用される条件の1つに、よく検便がある。食中毒対策だ。求人サイトを通して検便を行い、体内に病原菌がいないことを証明しなくてはいけない。

メジャーなファストフードチェーンの店舗の求人をいくつか見つけたので、求人アプリに検便を申し込むと、自宅にキットが送られてきた。透明の容器に液状の薬品が入っている。細い綿棒の先っぽに自分の黄金をちょっぴり乗せて容器に入れて送り返した。

数日後、求人サイトを通してスマホに結果が届いた。赤痢菌=陰性。サルモネラ菌=陰性。チフス菌=陰性。ハラチフス菌=陰性。腸管出血性大腸菌=陰性。

結果はパーフェクト。

これで外食産業でも働ける。さっそく、都心部にある大手のファストフードチェーンの求人に応募。採用になった。条件は比較的よかった。時給1300円。

ただし、労働時間は短い。週末の午前11時〜午後2時の3時間。繁忙時だけ働いてほしいというオーダーだ。休憩はもちろんなし。

ロケーションは高額所得者が多く住む地域で地下鉄駅の近く。客席数は30。こぢんまりした店舗だった。30代後半くらいの店長を含め6〜7人で切り盛りしている。僕のほかは、おそらく全員が常駐。50代と思われる女性が1人いて、あとは全員20代女子だった。華やかな現場だ。実にシステマチックに効率的に機能していることがよくわかった。

宅配便の会社で働いたときにも感じたが、大手企業は働く環境が実によく整備されている。その職場にだれが来ても機能するようになっている。

バックヤードの更衣室で制服に着替えて、フロアに出た。髪の毛の抜け落ち防止のためにキャップの下にかぶる網がうっとうしい。ネットの着用はチェーン系外食産業ではいまやスタンダードだ。