乾燥指との戦い
高齢の女性のお客さんに替わって、タッチパネルを操作していたときのこと。パネルに触れても反応してくれない。アイスコーヒーが買えない。お客さんと顔を見合わせる。
「すみません。僕は63歳なのですが」
打ち明けた。
「はあ……」
彼女が不安そうな顔になった。自分が頼っている相手が自分に近い世代だと悟った。
「指が乾燥していて、パネルが反応してくれないようです」
タッチパネルの多くは静電気を利用して機能する。指が乾燥していると、静電気が発生しづらく、機能しないことがある。駅のチャージ機でも、スマホでも、頻繁に起きる現象だ。
「あらっ、私と一緒」
彼女はちょっとうれしそうな顔になった。
「少し失礼して、厨房で指を濡らしてきますね」
そう言って指先を湿らせた。
戻ると、湿った指で、思い切りタッチパネルを叩いた。
パン! パン! パン! パン! パン!
無駄に力を入れてタッチパネルを叩くと、愉快なくらい反応する。お客さんがキャッキャとはしゃいだ。
「スゴイ! スゴイ! どうもありがとう」
「どういたしまして」
後ろに並ぶ若い男子もパチパチと拍手してくれた。