「死ぬまで欲深い人」はいない

高齢になればなるほど、ほんの小さなこと、些細なことでも幸福感に満たされるというのは認知症でなくても共通することなのです。

これは考えてみればごく自然な成り行きで、もう大きな欲は持ちようがないからです。

『死ぬのも楽しみ 「いい人生だった」と最期に思うために必要なこと 』(著:和田秀樹/廣済堂出版)

有名店の高価な和菓子より、食べ慣れた近所の店の饅頭のほうがうれしいし、遠くに出かけるより、町内の散歩のほうが楽しかったりします。「私はこれで十分」という気持ちです。

高齢になればなるほど欲も小さくなってくるし、ささやかなことで幸せを感じるようになってきます。老いの美点は無欲になってくることだと私は思っています。

無欲になれば、好きなことや自分がやりたいことをやっているだけで満足します。その一日が幸せな一日になります。

幸せな一日の繰り返しの最後に死が待っているとしても、そこまで何の苦しみもないのですから「死ぬのも楽しみ」という境地が自然に生まれてこないでしょうか。老いれば老いるほど、そして不自由が進めば進むほど、人間は無欲になっていくということです。