(写真提供:Photo AC)
高齢になると、迫りくる死を意識することも多くなります。しかし、長年高齢者医療の現場に携わってきた精神科医・和田秀樹先生は、「死を怖がるより、今を生きることに専心すれば、あなたのこれからの人生は確実に充実します」と語ります。そこで今回は、和田先生の著書『死ぬのも楽しみ 「いい人生だった」と最期に思うために必要なこと』から一部を抜粋し、高齢期を幸せに過ごすためのヒントをご紹介します。

認知症の特徴のひとつに「多幸感」がある

認知症の高齢者の死を何度も見ていて、ひとつ気がついたことがあります。

老いも進んで(認知症も進んでいます)、もう長くはないなと思わせるような時期、つまり、死が近づいてくればくるほど、人は本当に小さなことで喜んだり幸せそうな顔になるのです。

認知症の特徴のひとつに、「多幸感」があります。

多幸感というのは文字通り、たっぷりの幸福感に満たされることですが、お孫さんの様子を見ているだけで幸せそうな顔になったり、お茶を飲んでいるだけで心底うれしそうな表情を浮かべるような、本当に些細なことで幸福感に満たされる状態です。

認知症は、家族や身近な人から見れば、怒りっぽくなったり疑い深くなったりする不幸な病のように思えますが、ある程度進行し、そこに老いが加わると、小さなことにも幸福感を持つようになるというのは私もしばしば見てきたことです。

たとえば、一日のほとんどを寝たきりで過ごすような100歳間近のお婆ちゃんでも、甘いものを口に運ぶと笑顔を浮かべて幸せそうな顔をします。家族が呼びかけながら頬を撫でてあげると、心底うれしそうな顔になります。