家に入って、ゆっくりと梱包を開けた。緩衝材に包まれた二合瓶が入っている。しばらくの間、私は黙って細い緑の瓶のラベルを見つめていた。
 白鳥酒造 蓬命酒「うばら」
「うばら」とは野薔薇のことだ。私はこの薬用酒を造った男を知っている。だが、今日からは過去形を使わなければならない。知っていた、だ。
 添えられた手紙を読んだ。荷物が届いたら連絡してくれ、と携帯番号が記されている。
 連絡すればある事実を聞かされる。それがわかっているから電話を掛けるのが怖い。でも、聞かなければならない。私はその事実を聞くと約束したからだ。
 しばらくの間、窓の外を眺めながら立ち尽くしていた。雪など降っていない。ただ青空が広がっている。やっとわかった。先ほど、私が見た雪は前触れだ。報せが届くことを彼が教えてくれたのだ。
 私はいつかこの報せが届くことを知っていた。だが、あまりにも早すぎる。こんなに早くこの日がやってくるなんて思いもしなかった。
 私は空から眼を背け、眼を伏せた。覚悟を決めなければならない。絶望に備えなければならない。
 スマホを手に取った。ひとつ息をして記された番号に電話を掛ける。