「もしもし。山際です。……剣人(けんと)君、お久しぶりです。今、大丈夫ですか」
「ああ、木綿子さん。お久しぶりです。『うばら』届きましたか」
「ええ。新酒ですね。ありがとうございます。……いつですか」
「この前、四十九日が終わりました。最期の酒ができたので」
「……お悔やみを申し上げます」
「木綿子さんにお渡ししたいものがあるんです。霧(きり)さんの遺品です。受け取ってもらえますか」
剣人の声に強い意志が感じられた。……受け取ってもらえますか、ではない。受け取ってください、だ。
「ええ。私でよければ」
「じゃあ、渡しに行きます」
「いえ、そちらへお伺いします。……お線香も上げたいし」
「そうですか。よかった。霧さんも喜びます」
訪問の日を約束して、スマホを置いた。
窓を開けて青空に眼をこらしていると、ふいに雲が割れて光が射した。
――俺が死んだら鳥になって君のもとへ飛んでいくよ。
痛々しいほど澄んだ青空の、その遥か高いところにかすかな鳥の影が見えたような気がした。
