「プリン、おまけしときますね」
 お芋プリンが増えて四つになった。どれも美味しそうでついつい買いすぎてしまった。私と麻子だけでは到底食べきれない。父はプリンなどは「女子供の食う物」と言ってバカにするだけだ。
 まだ時間に余裕がある。私はすこし考えた。車だと寺内町まで三十分ほどか。この前、霧にコーヒーを奢ってもらった。御礼を差し入れたら蔵の人たちは喜んでくれるだろうか。
 私はお芋プリンをさらに買い足し、早速、蔵を訪れた。だが、霧は不在だった。応対してくれた剣人がなにか申し訳なさそうだ。
「夕方には帰ると思いますが……すみません」
「そうですか」
 先ほどまでの高揚が一瞬で萎んだ。プリンの入った紙袋が途端に重くなって落としそうになった。
「これ、よかったら皆さんで召し上がってください。卵や牛乳にアレルギーがあったら申し訳ないんですが……」
「いや、うちはみんな大丈夫です。ありがとうございます」
 剣人にお芋プリンと芋けんぴを渡し、また来ます、と店を出ようとすると呼び止められた。