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もし、あのとき、家に要介護の父がいなければ、私は霧の帰りを待っただろう。剣人たちに呆れられようと、厚かましく居座って動かなかったに違いない。
いつのまにか夜は更けて虫の音が高い。夜気に冷えたのか、ぞくりと身体が震えた。
明日は早い。いくらなんでも眠らないと仕事に障る。
「霧さん。おやすみなさい」
死人の半纏に挨拶をし、布団に入って灯りを消した。
翌朝、出勤してサンドイッチを作った。家に帰って来ると洗濯と掃除を済ませてから、広告原稿を書いた。気がつくともう夕刻だ。冷蔵庫をのぞくと、鰺の干物と卵、ブロッコリーとタマネギが残っていた。これだけあれば買物に行かなくてもいいだろう。
夕食は鰺を焼き、ブロッコリーとタマネギでサラダを作った。卵は温泉卵にし、蓬命酒をお湯割りにして食前酒にした。
温めると蓬の香りが際立つ。舐めるようにすこしずつ飲んで身体を温めた。
蓬命酒があるだけで、一人の食卓が豪華になったような気がした。
片付けを終え、風呂に入った。そして、一日の終わりに再び霧のパソコンを開いた。
