60歳を過ぎた木綿子は父の介護と引きこもりの娘の世話に日々追われている。不幸ではないが、いろんなものを諦めてきた人生だった。けれど、ひょんなことから知り合った2歳年下の男と出逢う。二人は互いに惹かれていくが……。遠田潤子さんが描く、静謐で過激な大人の恋愛小説。ぜひお楽しみください。


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 「記録1」

 縁の薄い人間がいる。
 それは、その人間の生まれ持った資質のせいか、後天的に獲得した邪な性格のせいか、それとも、前世の因縁などの超自然的なもののせいか、俺にはわからない。
 とにかく、俺は縁の薄い人間だった。望めば望むほど縁は俺の手から解け、滑り落ちて、やがて見えなくなってしまう。
 望まなければいい。そんなふうに自分の中で結論を出したはずだった。