神通力で人々を救う神

また一方で、天狗は山岳信仰と強く結びついている。全国各地の山々で、天狗は妖怪というよりは、その強力な神通力で人々を救う神として信仰されてきた。

現在、天狗といわれてすぐに思い浮かぶ、赤い顔に長い鼻を持ち山伏装束に身を包んだ姿は、江戸時代以降に広まったもので、中世まではくちばしや翼を持った烏天狗の姿のほうが一般的であったようだ。

(写真提供:Photo AC)

特に神通力に優れた天狗は「大天狗」と呼ばれ、主要な山に棲む代表的な大天狗たちを総称して「八天狗」と呼ぶことがある。愛宕山太郎坊、鞍馬山僧正坊、比良山次郎坊、飯綱三郎、大山伯耆坊、英彦山豊前坊、大峰山前鬼坊、白峰相模坊である。中でも、鞍馬山僧正坊は少年期の源義経――牛若丸に剣術の稽古をつけたという伝説でもよく知られている。

さらに、修験道の秘経とされる「天狗経」には前述の八天狗を含めて四十八天狗の名前が書かれている。いうなればTNG48である。実際に自分の住んでいる地域にはどんなTNG48のメンバーがいるか、調べてみてはいかがだろうか。

※本稿は、『ムー特別編集 図説 日本の妖怪百科』(ワン・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

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