モーリーンは生きていた

モーリーンは生きていたのだ。

ジャックはどれほど驚いたことか。心臓に持病を抱えていないのは幸いだった。

(写真提供:Photo AC)

彼は床に尻もちをつき、激しく泣いた。娘は何が起こっているのかさっぱり分からず、当惑した。娘の死を悼む涙を流し終えていなかったジャックは、娘が生きていることを知って泣いたのだ。

ジャックは駅まで車を走らせ、モーリーンを家に連れて帰ると、事情を説明した。

モーリーンは旅に出て数日後に、携帯を壊してしまった。そのために、父親が電話をかけても通じなかったのだ。

ジャックはその日のうちに、メフディに電話した。メフディは、何か困ったことがあった場合に、と電話番号をジャックに伝えていたのだ。娘の生還は困り事ではなかったが、警察に知らせる必要がある。

メフディは当惑して「では、埋葬されたのは誰なんでしょう?」と言った。

まさに、核心を突く質問であった。

この事件は警察の失態として話題になり、地方紙の第一面を飾った。テレビのクルーもやって来て、モーリーンとジャックにインタビューした。

死者の身元特定が間違っていたことは、親子2人にとって幸いだった。ジャックは心の優しい人だったので、誰も恨んだりはせず、今回の騒動のいい面だけを心に留めることにした。失ったと思っていた娘と再会できた幸せは、ほんの少し前に妻の死がもたらした苦しみを和らげてくれたからだ。