種籾泥棒の犯人

ある夜、お銀は決心した。

お銀はぼろ布に身を包み、月影に紛れて蔵に忍び込んだ。心臓が鳴り、汗が冷たく背を流れたが、弟や妹の顔を思い出すと足は止まらなかった。蔵の隙間から小さな麻袋に籾を詰め、懐に隠して逃げ帰った。

『名城怪談』(著:田辺青蛙、監修:北川央、イラスト:うめだまりこ/エクスナレッジ)

家に戻ったお銀は、籾をすり鉢で砕き、わずかな水で粥を煮た。幼い弟妹は目を輝かせ、水に色がついただけのような薄い粥を笑顔で食べた。お銀も一口だけ口に含んだが、罪の重さに喉が詰まった。それでも、弟妹の笑顔を見ると、やってよかったと思えた。

だが、翌朝、辺りは騒ぎとなった。蔵の籾が減っていることが発覚したのだ。近所の人々は互いに目を光らせ、ついにお銀の家で隠していた籾の袋が見つかったことが決定打となり、種籾泥棒の犯人ということが発覚してしまった。