そもそも、すい臓がんは初期の段階では自覚症状がなく、非常に見つけにくいがんです。余命を告げられたという点からも、「治すための治療」は困難な時期だったのでしょう。
たとえ早期であったとしても、ご高齢の方に手術は負担が大きく、抗がん剤治療も食欲低下などを考慮してあえて行わない選択をすることも少なくありません。
では、91歳のお母様にできる医療として何が重要かと言えば、痛みの抑制など、「苦しみを減らす治療」になります。
苦しくないこと、自分らしくいられること、ご家族と穏やかな時間を過ごせること――人が人として生きるための大切な要素です。つまり、苦しみを和らげる緩和ケアを受けながら、残された時間を過ごしてもらうのはとてもよい選択だと考えます。
気にされている吐き気は、薬の副作用だけでなく、がんによる消化管の閉塞から、あるいはストレスでも生じるもの。制吐剤(吐き気止め)の使用、食事の内容や姿勢の工夫、環境整備など、ホスピスではさまざまな対策が用意されていますので、遠慮せずに相談してみてください。
お母様やご家族が望めば在宅医療も可能だとは思われます。ただ、見守る家族は突発的な事態への対応など、緊張を強いられることも。
もし私が同じ状態になったら、迷わずホスピスに入れてほしいと告げるでしょう。ホスピスで心穏やかな日々を過ごすほうが自分も家族も幸せだと思うからです。
