(イラスト:山崎のぶこ)

お母様の希望も聞いてあげましょう

ご相談のお手紙を拝見して感じたのは、すい臓がんと診断されて戸惑っていらっしゃるのは、お母様自身というより、むしろ相談者さんなのではないかということです。

とても悲しい現実ですが、どんな人にも死は必ず訪れます。その死という「ゴール」に向かい、いかに患者さんの希望に沿って穏やかにソフトランディングしていくか。それが高齢者医療に従事する者の使命だと、私は考えています。

「治す」ための積極的な治療と、高齢者の「生ききる」ための医療とでは、考え方も治療法も根本的に違うのです。ですから、まずは現在のお母様にとって何が幸せなのか、どんなことを嬉しいと感じるのかを、ご本人に聞いてあげてください。

私が勤務している高齢者病院で、入院中の男性患者さんにご家族が鰻重を届けられたことがありました。患者さんは終末期で口から食べられる状態ではなく、鰻をただ見ているだけ。私は、「なんて切ないことをするんだろう」「家族の自己満足では?」と感じてしまいました。

ところが、当の患者さんは、「皆で鰻を食べた思い出がよみがえる」「食べられないけど、思いやりが嬉しい」とおっしゃったのです。

それを聞き、私はハッとさせられました。そのご家族は、嬉しいときだけでなく、悲しいことがあって家族一丸となって頑張ろうというときも、鰻重を食べていたそうです。ご家族の思いがしっかり伝わって、患者さんも幸せを感じたのですね。

相談者さんもお母様が笑顔になれるように、家族だからこそできることを考えてみてはいかがでしょうか。花がお好きなら、自宅の庭に咲いている花をブーケにして持っていってあげるとか。

思い悩んでいるより、残された時間をいかにハッピーに過ごせるかを考えたほうが、お母様も相談者さんも幸せになれるのではないかと思います。

 


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