再婚を考えた事情

人生の分岐点になったのは、最初の夫の病死だ。千佐子は当時47歳。子供らは大きくなっていたが、夫婦で営んだ印刷会社を女手一つで切り盛りせねばならなくなった。

「工場を建てるのに借りたお金が1千万とか2千万とかありました。それを返すのに“必死のパッチ”です」

『実録 死刑囚26人の素顔』(著:片岡健/宝島社)

だが、バブル崩壊の影響で2001年、印刷会社は廃業。千佐子はこれ以降、複数の結婚相談所に登録し、見合いを重ねるようになった。

再婚を考えた事情を尋ねると、千佐子はこう答えた。

「生活のためです。仕事は続けなあかんし、借金は返さんとあかん。それが第一。商売してたら、男の人の手も必要ですからね」

――そのために好きでもない男性と結婚していたのですか?

「好きじゃない人とは結婚しませんよ。でも、そこそこの経済力がある人というのが条件でしたね」

筧勇夫さん以外の3人の被害者は体が弱く、自分が経済的に支えていたという話と矛盾しているが、千佐子は無自覚のようだった。

ちなみに千佐子が犯行に用いた青酸化合物は、印刷会社で印刷の失敗を消すために使っていたものだったとされている。