「育ての親」への特別な感情

そこまで話した時だった。千佐子は目から涙をポロポロこぼし始めた。そして嗚咽しながら、こう続けた。

「いい両親やったから。あとで知ったけど、お母さん、子宮の病気をしたみたい。子供が産めないんで、私をもらい子したみたいやね。本当にいい親で、私の子供も『おばあちゃん良かったな』と言ってましたから」

千佐子にとって、育ての親は特別な存在らしい。

「育ての親は、模範にしたい人でした。私はこんな罪を犯しましたけど。今もあの両親は尊敬しています」

私は話を聞きながら、出自を知ったショックが千佐子の人格を歪めた可能性もあるように思えた。だが、それ以上のことは調べようがなかった。

その後、千佐子は2019年5月24日に大阪高裁から控訴棄却、2021年6月29日に最高裁第三小法廷から上告棄却の判決を受け、死刑が確定。

死刑執行を待たず、2024年12月26日、収容先の大阪拘置所から病院へ搬送後、病死した。

78歳だった。