「学生時代は、親というよりはコーチ。母とはバレーボールを通して強い絆で結ばれ、二人三脚で歩んできました」
3年前に母を亡くし、空き家となった実家。母の思い出の品々にふれるたび、感情を揺さぶられながらも気持ちは変わっていき──(構成=丸山あかね)

実家を売却しようと思っていたけれど

母が他界したのは2017年10月のことでした。享年84。同年の5月に体調を崩して入院していたのですが、直前にはハワイに旅行したほど元気だったので、私のなかでは突然逝ってしまったという気持ちが強かった。

学生時代は、親というよりはコーチ。母とはバレーボールを通して強い絆で結ばれ、二人三脚で歩んできたので、これまでのすべてが次から次へとこみ上げてきて、本当にやりきれなくて……。

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母の堀江方子(まさこ)さんは1960年に世界選手権に出場し、銀メダルを獲得するなど大活躍した日本の元女子バレーボール選手。引退後は渡米し、スウェーデン系アメリカ人と結婚、ヨーコさんを出産した。その後、別居のため、当時6歳のヨーコさんと日本に移住。母校であるバレーボールの強豪・中村高校のコーチを経て、早稲田大学のコーチを務め、同じくバレーボールの道に進んだヨーコさんを7年にわたり指導した。

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喪失感から何もする気になれずにいたのですが、そうも言っていられないな、と思ったのは3ヵ月くらい経過した頃だったでしょうか。母は千葉県印旛郡に築28年、2階建て3LDKの日本家屋を遺していました。

定期的に風を通しに行かないと老朽化が進みますし、誰も暮らしていなくても固定資産税が年間約10万円、光熱費の基本料金は月に4000円ほどかかります。それに空き巣や放火が心配で……。といって、解体するとなると500万円くらいかかり、更地にすると固定資産税が6倍になってしまうと聞いて、「えーっ!」って。