特別に芝居はしない

ところで竜童さんご夫妻はとても多くの方々に曲を提供しておられますが、中でも山口百恵さんにはたくさんの名曲を……。

――ええ、引退から30年経った時にお逢いした際に、何で私たちに依頼を? って訊いたんですよ。そしたら、民放のラジオ番組を3ヵ月ほど二人で担当したことがあって、その時に私が百恵さんに書いて渡した歌がある、それがきっかけだと。

でも後から調べるとこのラジオは「横須賀ストーリー」よりも後。人伝には、「涙のシークレット・ラヴ」という歌を聴いて、「こういうロマンチックな曲を書いてもらいたい」と思って私と阿木にオーダーしたとも聞いています。真相はわからないです。

それにしても、17歳になったばかりの少女が、自らチーフマネージャーに頼むなんて、普通そんなことしないですよ。それでアルバム用に作った4曲の中に「横須賀ストーリー」もあったわけで、それからは3ヵ月に一曲書くという、座付音楽係みたいになっちゃった。

百恵さんとの再会の時、あの忙しい最中に、どうやって歌を覚えたの? と訊ねたんです。たとえば「プレイバックPart2」は、一晩で作った翌日にはもう歌を入れているわけで……。

すると、あの時は朝の6時から夜までドラマ「赤い」シリーズを撮影していて、その合間に歌詞も曲も覚えちゃうんだと。寝る時間は多分3時間。そんな生活から21歳で引退するまでの5年の間に私たちは69曲、百恵さんに曲を提供したわけですが、無我夢中でした。