「光子が生まれてから小学校に上がる頃まで、僕はあんまり仕事をしてなかったから。時間だけはいっぱいあったんだよ。(笑)」(みつのりさん)

頼まれた絵ばかり描くうちに疑問が湧いて

太郎 僕が小さい頃の記憶では、お父さんはいつも絵を描いていた。ちゃぶ台に並んだ家族4人分のご飯を前に、「描くから食べないで」とか言い出して、描き終わる頃にはご飯が冷めちゃってる。

お墓参りをしている時も描いていたし、お姉ちゃんに聞いたら、スーパーでも急に絵を描き出すから、警備員さんに職務質問されたっていうじゃない。(笑)

みつのり そうだったっけ? 今はもう、あの時ほどじゃないけどね。

太郎 小さい頃から、絵を描くのは好きだったの?

みつのり そうだね。6人きょうだいで、兄たちは野球が得意だったけど、僕はそういう仲間に入れない子で落書きばっかりしてたから。あと、近所の空き地に来る紙芝居もよく見に行ってたね。

太郎 高校で工業デザインを勉強して、広島にある自動車会社の宣伝部に就職したんだよね?

みつのり そう。初任給が高かったんだよ。その頃の僕は、お金を稼いで親に渡すことが子どもの役目だって、なぜか思っていたの。だから、とにかくお金を稼げる仕事がしたかった。

太郎 僕の知ってるお父さんと、ずいぶん違うぞ(笑)。その後、お金にならない仕事に就くのに。