みつのり ほんとだねー(笑)。でも、仕事のかたわら絵本を自費出版したり、コマ撮りアニメを作ったりはしていたんだよ。そこで知り合った詩人の友だちに誘われて、無謀にも会社を辞めて東京へ出てきちゃった。
太郎 いくつの時?
みつのり 25歳だったかな。友だちの紹介で、東京に来てからも広告とかの仕事はたくさんあったけど、頼まれた絵ばかり描くうちに、「絵を描くってこういうことなのか?」みたいな疑問が湧いてきて。
なんだか行き詰まってしまって、自爆的というのかな。友だちによれば、飲めないお酒で酔っぱらっては新宿の大通りに飛び出して「轢けー!」とか叫んでいたらしいよ。
太郎 お母さんと出会ったのは、そんな暗黒時代だよね。
みつのり 高円寺の僕のアパートに、友だちが連れてきたんだよ。その頃の僕は、だらしない恰好で髪も長く伸ばしっぱなしだったんだけど、しばらく話しているうちに彼女が突然、「床屋さん、しましょうか?」って言いだした。
太郎 理容師でもなんでもないのに。(笑)
みつのり 新聞紙を床に敷いて、チョキチョキ切ってもらいながら、「こういう人と結婚できたらな」とふと感じたの。特にカワイイとかは思わなかったけど。
太郎 ちょっとーっ!(笑)
みつのり 太郎も知ってるとおり、お母さんの実家はものすごい山の中にあってね。そこで自給自足のような暮らしをしてきていたから、生活力とか、そこにあるものでなんとかする力が強かった。