なんだかんだ幸せなのかもね

この映画は、悪人は一人も出てこないし、かといって偽善者も出てこないというのが自然な感じで気持ちがいいなと。登場する人達は、夫婦喧嘩をしたり、子どもの問題に頭を悩ませたり、認知症の母親に戸惑いながらも寄り添い合い、助け合って暮らしている。こんなに簡単に人助けをすることはないよな、とか思うのですが、観ているうちに「あるかも」と思わせてくれる作品の懐の深さがある。

映画『お終活3 幸春!人生メモリーズ』場面写真(三田佳子さん、小日向文世さん)
真一の後輩・加藤博(小日向文世)は、母・豊子(三田佳子)の認知症を受け入れられず…(C)2026「お終活3」製作委員会

日常生活のあるあるエピソード満載なのも愉快でした。みんなが日常生活の中で躓くところで躓くので、自分を見ているようでクスっと笑ってしまう。橋爪功さん演じる我儘な夫に「うちの旦那とそっくり」と思う人もいれば、高畑淳子さんが演じる妻のイライラぶりに共感する人もいることでしょう。でもきっと観た人はホッとするんですよ。みんなこんな感じなのかって。そして気づくんですよ。なんだかんだ言っても幸せなのかもねって。そこがこの作品の最大の魅力だと思います。

誰の人生にもいろいろなことがあって、愛する人との死別など、辛いことや哀しいことを経験しない人なんて一人もいません。映画には生々しい問題は出てきませんが、現実的にはシビアな試練に直面することもありますよね。それでもみんな乗り越えて生きているということに僕は感動を覚えます。監督は優しい目で人間を見つめ、笑いあり涙ありの作品を作られたのだなと思ったのですが、その感覚は僕の曲づくりの中にもあるというか、むしろ得意分野なので、いい主題歌を作れそうな予感だけは最初からありました。

――『お終活―』というタイトルの映画の主題歌を、華やかなビッグバンド演奏でという発想に驚きました。

全体的にコミカルに描かれた作品なので、明るい曲がいいなと。でも明るいだけではダメで、ゴージャスにしたかった。だって誰の人生もドラマティックで、悲喜こもごもが詰まっているという意味でゴージャスなのですから。

ビッグバンドってシナトラ時代のサウンドなので、懐かしさがあっていい感じだし、僕にとって初の試みだったので「コレだ」と。映画の中で最初に曲が流れるのは結婚式の場面だとわかっていたのでフィットするとは思いました。でも僕としては映画の終盤に妻が掃除機をかけながら、ソファーに座ってる夫に「足どけて!」と言い放つシーンが印象的で。こういうごく日常的な暮らしの場面にビッグバンドの演奏が流れてきたら効果的だと想像力を掻き立てられたのです。

映画『お終活3 幸春!人生メモリーズ』場面写真(橋爪功さん、剛力彩芽さん)
父とバージンロードを歩く亜矢(剛力彩芽) (C)2026「お終活3」製作委員会

口を開けば喧嘩ばかりの夫婦関係も、いつか過去になる。どちらかがいなくなったら寂しいですよ。その時になってはじめて失ったものの大切さに気づく。今がどんなに満ち足りているのかを見つめて楽しく生きましょうよ、という気持ちを歌に込めました。