ジャンルにとらわれない
乱読ができるのはベーター読みのできる人である。アルファー読みだけでは乱読はできても解読はできない。
小説ばかり読んでいては乱読できない。ベーター読みもうまくいかない。文学読書をありがたがりすぎるのは、いくらかおくれた読者である。ノンフィクションがおもしろくなるには、ベーター読みの知能が必要である。哲学的な本がおもしろくなるには、かなり進んだベーター読みの力が求められる。
ベーター読みの能力を身につければ、科学的な本も、哲学も、宗教的書物も、小説とは異なるけれども、好奇心を刺激する点ではおもしろい読みができるはずである。
ベーター読みの力のない人は、自分の親しむ一つのジャンルにしがみつく。小説好きはあけてもくれても小説を読む。新しい小説でもアルファー読みをするから、読者の成長は限られる。文学青年も、中年くらいになると、アルファー読みにあきがきて、本離れするようになる。
乱読はジャンルにとらわれない。なんでもおもしろそうなものに飛びつく。先週はモンテニューを読んでいたがちょっと途中で脱線、今週は寺田寅彦を読んでいる。来週は『枕草子』を開いてみようと考えて心おどらせる、といったのが乱読である。ちょっとやそっとのことでは乱読家にはなれないのである。
とにかく小さな分野の中にこもらないことだ。
広く知の世界を、好奇心にみちびかれて放浪する。人に迷惑がかかるわけではないし、遠慮は無用。10年、20年と乱読していればちょっとした教養を身につけることは、たいていの人に可能である。
※本稿は、『乱読・乱談のセレンディピティ』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
『乱読・乱談のセレンディピティ』(著:外山滋比古/扶桑社)
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