(イラスト:イトガマユミ)
骨折しないためには、転ばない環境を整えることも大切です。とくに注意したいのが、一日の長い時間を過ごす自宅での事故。安全な住まいをつくるヒントを専門家に聞きました(構成:村瀬素子)

つまずきに繋がる複数の要因

高齢者の転倒・転落による事故は、交通事故よりも多く、そのうち6割近くが自宅など家の中で発生しています。なぜ住み慣れた場所でそのようなことが起きてしまうのでしょうか。

転倒を起こす要因の一つは老化です。年齢を重ねれば、誰でも身体機能が低下します。歩行に直接かかわる足腰だけでなく、白内障や緑内障などによる視力低下で足元が見えづらくなり、加齢性難聴も平衡感覚に影響。そこに神経障害や筋力低下を伴う糖尿病、パーキンソン病などの病気や運動不足が重なると、より転びやすくなるのです。

加えて、家の中には段差や敷物、床に置いたままの荷物など、転倒を引き起こす要素があちこちにあります。けれども、「住み慣れたわが家」は外出時に比べて油断しやすい。家の中を歩く、床から立ち上がる、敷居をまたぐ、階段を上る・下りる、といった何気ない日常動作でも、うっかりつまずいたり滑ったりしてしまうのです。

なかでも危ないのが、「片足立ち」をしているタイミング。とくに階段の上り下り、衣服や靴の着脱時、浴室で湯船をまたぐ時は片足で立つ時間が長く、バランスを崩しやすいので気をつけましょう。

また、脚力が衰えると両足で立つ時間が長くなり、すり足やちょこちょこ歩きになりがちです。こうした歩行は前のめりの姿勢で視野が狭くなるうえ、つま先が上がらないので、つまずきやすくなります。

シニア世代の転倒は骨折や頭のケガによる脳障害をきたすケースもあり、要介護、寝たきりへと繋がりかねません。

転倒を防ぐには身体機能の低下を食い止める体づくりが不可欠ですが、一方で、家の中を転びにくい環境に整えることも重要です。その対策をお伝えしましょう。